民法改正と運送業
2020年4月,大きな民法改正がありました。なんと120年ぶりの改正です。
運送業にも影響のある改正ですので,経営者の方々は必見です。
まずは時効の期間が変わったという点を押さえておくことが大事です。
1 運送料金の時効が1年→5年に
運送料金の時効は,今まで1年が原則でした。そのため,ぼけぼけしているとあっと
いう間に時効になってしまっていました。
それが今回の民法改正ではその運送料金の時効の期間が延び,5年となりました。
それにより未回収になってしまった売掛金が発生したとしても,5年であればいろい
ろな方法をもって債権回収に臨むことが可能になりました。
民法は2020年4月1日から新しいものになりましたが,それ以前に発生している
債権については5年という時効は適用されず,従前どおり1年になってしまう点には注
意が必要です。
2 定型約款の新設
定型約款?なにそれ?という方も多いと思います。かく言う私もゴニョゴニョ…
定型約款とは,
①定型約款準備者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって
②この内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なもの
のことを言います。
これだけだと何が何やらよくわかりません。が,鉄道に乗る時の旅客約款がこ
れに当たる代表的なものだと思います。旅客約款のように不特定多数の人や会社
に対し,その内容を画一的に適用するものが定型約款に該当します。
運送会社間で取り交わす契約書の場合,当事者によって内容を変えたりします
ので,契約書がこの定型約款に当たるケースはかなり少ないように思います。
他方,不特定多数のお客様を相手方としており,画一的に適用される契約書を
作っている運送会社様の場合には,その契約書は定型約款に該当すると思われま
す。
じゃあ,定型約款に該当するとどんなことが起きるのよ?というと,
定型約款の内容が契約内容として扱われます。
取引の相手方からすると定型約款に書いてあることを「そんなの知らないし」
とか言えなくなっちゃうんですね。
定型約款が契約の内容となるためには,
①定型約款を契約の内容とする合意があったor定型約款をあらかじめ相手方
に示していた。
②相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則に反する内容の条
項は,合意したとみなされない旨の文言を入れておく
という要件が必要です。
そして定型約款に該当すると,
①定型約款の内容は契約の内容となる
②定型約款準備者は取引の相手方から要請があった場合には,遅滞なく定型
約款を提示しないといけない
となります。
むむむ…難しい。