ドライバーが会社のトラックで事故を起こした!ということは良くあります。
その際、トラックの修理代など会社が被った損害、どうしていますか?
損害を事故を起こしたドライバーに請求したい!と相談されるケースはとても多いです。
それって法律上できるんですか?というのがこのお話です。

最初から結論

・全額の負担はNG
・損害の一部の請求であれば認められる可能性が高い
・賃金から損害額の控除は、自由意志でなされた同意があればOK

という感じです。以下によくある質問をQ&A方式でまとめました。

質問1
<ドライバーの過失により生じた事故の修理代について全額ドライバーに払ってもらいたい!>

回答
全額はNGです。
ドライバーと会社の負担割合を決めて、その負担割合分だけドライバーに請求しましょう。
その際、きちんと話し合いの経過がわかる資料、ドライバーとの合意書を作成しましょう。

ドライバーに責任があるのは当然ですが、会社はドライバーの働きによって利益を得ているのであり、損失だけそのドライバーにすべて被せることは「報償責任の法理」からできないとされています。

強行突破で全額請求している会社もたまに見ますが、だいたい労基に駆け込まれています。
その結果、ドライバーから残業代請求、パワハラなどを理由とした損害賠償請求をされるルートに進んでしまうことが多いです。
強行突破は余計なトラブルを生むだけなのでおすすめできません。

   

質問2
<ドライバーに請求する修理代を給料から天引きしたい!>

回答
わかります。そのお気持ち、よ~くわかります。払ってくれないケース、本当に多いですもんね。
しかし、同意なく勝手に天引きするのはNGです。
労基法24条で賃金を勝手に相殺することが禁止されているからです。

なので、ドライバーからの同意をとりましょう。

ここで注意が必要なのが、同意は「自由な意思に基づいてされたものであると認められる合理的な理由が客観的にも存在すると認められる」ものである必要があります。

なんだかよくわからない言い回しですが、その状況だったら(ドライバー側にも色々メリットあるから)合意するよね、という状況だったらOKという感じです。

なので、給料と相殺しようとする場合には、そのドライバーによくよく説明し、ホントにそれでいいか確認したうえで天引きしましょう。できればその状況を録音なりして、後で争われたときに「いやいや自由意志に基づく合意ですよ」と反論できるようにしておきましょう。

だいたい、無理やり書かされたとか言われがちです。
その時に、いやいやいやときちんと反論できる材料があると強いです。

質問3
<途中でやめてしまった!最後の給料から全額差し引いていい?>

回答
最後の給料から全額天引き、これはNGです。

分割払いが残っているのに辞めてしまう人、多いですよね・・・。
しかし、残った分割金を全額一気に給料から相殺すると、そういうのは合意していない!と言われてしまう可能性が高いです。生活できなくなってしまいますもんね。
それをやる場合には、途中でやめたら残金を給料から相殺することについてそのドライバーとの合意(質問2で解説した自由意志による合意です)が必要です。

それに関連して、最後の給料は手渡しにして、そこから払ってもらうのはいいですか?という相談もよくあります。
だいたい給料の支払い方法は就業規則で定めている場合が多いです。
そして銀行振込みになっているケースが圧倒的に多いです。
その場合、会社が勝手に「手渡しだから取りに来い!」と変更するのはダメです。単なる給料不払いになってしまうので注意しましょう。